大晦日の素晴らしい幕切れと新年最高のスタート

　大晦日の東西5大世界戦は、いずれの試合も白熱した好勝負を展開、さらに記録ずくめの１日となった。
　5試合もの世界戦が同日開催され、勝者はすべて日本人。3人の新王者が誕生し、井岡一翔は日本最短記録となる11戦目で2階級制覇を達成。さらに内山高志と河野公平の試合を放映したテレビ東京ではNHK『紅白歌合戦』の裏番組としては歴代最高視聴率の5.1％をマークした。
　井岡は圧倒的な強さで前WBA暫定王者のホセ・A・ロドリゲスを粉砕。井岡の同志・宮崎亮は元世界王者ポンサワン・ポープラムックとのタフ・ファイトに競り勝ち、2−1判定で初戴冠。紆余曲折あった人生を一気に清算した。
　内山は昨年同様、暫定王者との王座統一戦に臨み、29戦無敗（15KO）でプロ、アマ通算130戦して未だダウンの経験のないブライアン・バスケスを連打で8回TKOに葬る。 　佐藤洋太は変幻自在に試合をコントロール、好漢・赤穂亮とのライバル対決を制した。そして河野公平──。奇跡の番狂わせで"日本人キラー"のテーパリット・ゴーキャットジムを鮮やかに逆転KO。あっと驚く大晦日を演じてみせた。
　ちなみに河野、昨年9月、世界14位のペッチバンボーン・ゴーキャットジムを小差判定で破り、世界ランクに返り咲き、今回の快挙へと繋げたわけだが、このペッチバンボーン、当日の前座に出場。元日本上位ランカーの金城智哉を62秒でKO。新王者への次期挑戦者候補となっている。
　新年初興行となった1月5日には怪物・井上尚弥がデビュー2戦目のリングに登場。タイ王者のガオプラチャン・チューワッタナと対戦し、バックステップを踏みながらの左フック一閃。僅か110秒で圧巻のノックアウト劇を演じてみせた。試合後のインタビューでは「（早いKOに）集まってくれたファンに申し訳ない」と答えたが、この極上のパフォーマンスに不満をもらすファンなどいるはずがない。
　まだ19歳。昨年10月のデビュー戦に続き、観戦した内山も「井上選手の素晴らしいところは、どんな体勢からも力強いパンチが打てること。体幹が強く、バランスもいい」と絶賛。
　大晦日の素晴らしい幕切れと新年最高のスタート。今年のボクシング界も明るい。
　　　　（デザイナー・周東）